ダイアログ・イン・ザ・ダーク −暗闇の中でわかること−

昨年夏に、東京外苑前にあった常設会場が閉鎖してしまった「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」

2020年オリンピック・パラリンピックに向けての盛り上がりや、SDGsの広まる中で大変残念でしたが、なんと金沢で開催されることになりました。

 

東京では行ったことがあったのですが、金沢開催は、金沢らしく工芸や茶道を取り入れているそうです。(写真は2018年9月11日北陸中日新聞)

開催費用の一部を「FAAVO金沢」にてクラウドファンディングを行っています。

東京会場が閉鎖する前に、元社員達(僕の会社は自分で食える人は独立してもらいます)と一緒に行ってきました。

その時僕が感じたことを書き留めます。

完全な暗闇だと何も見えません。急に暗い所に入ると最初は何も見えませんが、だんだんと目が慣れて見えてきます。でも、本当に光がないと目が慣れてくるということはありません。

数人のチームに分かれて進みます。最初はなんとなく楽しいと思っていましたが、進もうと思うと怖くて進めません。どこに向かえばいいのか、どこに道があるのか…。目をつむって手探りで歩いたことがある人もいると思いますが、目を開けたら見える環境とは不安が全然違います。一歩一歩確認して進む感じ。顔に何かあたったら怖いので、右手は杖で地面を確認しながら、左手は顔面をガードしながらかろうじて進みました。

各チームにはアテンドをしてくれる視覚障害者の方がいます。普段は、白杖を持った人がいると「ぶつからないかな」「段差は大丈夫かな」と心配になりますが、暗闇の世界では、普段から暗闇の中で生活をしている視覚障害者の方がものすごく頼りになります。

目が見えないと、他の感覚に頼るしかありません。耳を澄まして空気の流れを感じます。水の音が聞こえると川があるのかなと思ったり。足の感覚でどんなところを歩いているんだろう。アスファルトかな、土の上かな、草が生えているのか。どれだけ歩いたのか、頭の中で地図を想像します。

コミュニケーションの取り方も変わってきます。はぐれないように声をかけたり、何か危険なものがあったら積極的に声を出したり。その中で信頼感も生まれていきます。

そして暗闇の中での対話。

見た目で人を判断してはいけないというけれど、普段はやっぱり見た目で印象を決めてから話を聞いています。見えないということで、声に集中して聞くことができますし、パーソナルな話も恥ずかしくなくできます。自分の本当の気持ちとか、考えていることとか、取り繕うことなくさらけ出すことができるという感じです。ぜひ、家族や友人など大切な人と行ってほしいです。

「目が見えない」というとなんとなく能力が劣っていると感じてしまいますが、人間の能力とは面白いもので、目が見えなくなると、他の感覚が研ぎ澄まされていくようです。自分には見えないものが見えて、感じることのできないものを感じることができ、到底できないことができる人がいるということです。

普段の生活や仕事においても多様性を理解するということは役立ちます。

人の能力は様々です。計算が得意な人もいれば、人を笑わせるのが得意な人もいる。美的感覚に優れた人もいれば、人の感情に寄り添うことが得意な人もいる。

他人に対して「なんでこんなこともできないの」と思うことがあるかもしれません。しかし、それはたまたまその人が苦手で自分が得意なだけです。全ての能力が優れた人はいません。

小さなプロジェクトであれば、自分一人で出来るかもしれません。でも、自分と得意なことが違う人と一緒に協力すれば、チームでもっと大きな力を発揮することができます。

そうやって成し遂げた喜びは一人の時の何倍にもなります。

そのためには、自分と他人は違うんだということを理解する。自分のできること、できないことを認識し、誰かのおかげで自分も能力を発揮することができているんだということに感謝する。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」ではそんな経験ができ、いつも助けてくれている人たちに感謝することができます。会社の研修などにもおすすめです。

今日は朝から講演のために出張ですが、空港まで運転してくれる従業員は、新聞を読みやすいようにし車に置いておいてくれています。忘れ物の多い僕に「あれは持ちましたか」と聞いてくれます。

僕の得意なことに集中できる環境を作ってくれているみんなに感謝します。

 

『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』とは?

日常生活のさまざまな環境を織り込んだ真っ暗な空間を、視覚意外の感覚を使って体験するワークショップ。ドイツの哲学者ハイネッケ博士が考案。これまで世界41ヵ国以上で開催され、800万人以上が体験。日本には1999年に初めて紹介され、現在は企業研修などにも導入されている。

今回は「東アジア文化都市2018金沢」の市民連携特別事業で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク@21世紀美術館」と題して開催されています。開催費用の一部は、弊社の運営するクラウドファンディング FAAVO金沢で募集します。

 

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