書籍紹介 天才を殺す凡人

 タイトルがドキッとする内容でどんな本なのか気になっていた人も多いと思いますが、これはぜひ読んでください。日本が現在低迷している理由、大企業においてイノベーションが起きない理由が見えてきます。ストーリー仕立てで、これまでなんとなく思っていたことが明確にまとめられています。

 人の属性を天才、秀才、凡人の3つに分けて表しています。この3者の関係性が実におもしろくて納得できます。

 まず、凡人は天才のことが理解できません。何を言っているのかわからないので、天才とバカの区別がつきません。

 しかし、天才は凡人に理解してほしいと思っています。でも理解されないという孤独があります。

 そして、天才は秀才には興味がありません。

 しかし、秀才は天才に対して大変複雑な感情をいだいています。天才のようになりたいという憧れもあるのですが、嫉妬もあります。天才が自分に興味がないということも嫉妬してしまう要因かもしれません。

 一方で秀才は凡人のことを心の中で見下しています。

 そして凡人は秀才のことを天才だと勘違いしています。秀才は論理的に説明することができるので凡人にも理解できますが、天才のことは理解できないという状況です。

 天才と秀才と凡人の三者はそれぞれの特性を持っています。天才は創造性、誰もやったことないこと、考えつかなかったことを実行する力を持っています。秀才は再現性を持っています。天才のように新たなモノを作り出す創造性はありませんが、できたモノの理屈を凡人にもわかりやすく説明することができます。

 数で言うと天才は少なく、次に秀才、そして凡人はたくさんいます。タイトルにある天才を殺す凡人とは凡人が理解できない天才を多数決により排斥してしまうことです。本当に自殺してしまう天才も多くいます。太宰治、芥川龍之介、三島由紀夫などの文豪に多いですし、アーティストも自殺する人がいます。

 これは企業においても起こっており、大企業においてイノベーションが起こらない理由でもあります。企業はまずは天才のアイデアにより生み出されます。しかしある程度大きくなってくるとたくさんの人が働くようになります。多くの凡人が必要になってきますが、天才の言っていることは凡人にはうまく伝わらないので秀才が力を持ちます。秀才が凡人にわかりやすく説明することで凡人は理解されます。秀才は天才に対して憧れと嫉妬の両方の感情を持っています。秀才が憧れの感情から天才を引き立てようとすれば企業としてはうまくいきますが、秀才が持っている嫉妬の感情が出た時は秀才は凡人を動かし天才を排除します。自分で創業したアップルを追い出されたスティーブ・ジョブズなどはまさにこの典型です。

 大きな企業においては天才の原石があっても凡人の共感が得られないため彼らの意見が通ることはありません。彼らの言っていることは論理的に説明できないので、会議をすれば絶対に通らないのです。

 企業もイノベーションを起こしたいと思っているけれど組織として意思決定していては絶対に生まれません。イノベーションを起こそうと思えば、天才かもしれない原石に会議で承認を得なくても自由に行動できて失敗の責任を問われないような体制を作るなどが考えられます。大きくてもイノベーションを起こしているグーグルでは20%ルールというものがあります。これは勤務時間中の20%は主要な業務に関係のない自分自身が取り組みたいプロジェクトを行うというもので、ここから生まれてきたサービスも多くあります。

 これまでは、天才と秀才と凡人と分けて話をしてきましたが、実は一人の人間の中にも天才性、秀才性、凡人性が混ざっています。しかし大きくなっていく中で、自分の天才性が失われていったり、自分の天才性を忘れてしまったりということがあります。特に日本の教育のように、みんなと同じようにやりなさいとか、偏差値という一つの物差しで測ってしまった場合には天才性が失われやすくなります。社会としては一人一人の天才性が開花できるような教育システムや職場環境を作ることが必要ですし、個人としては誰にも理解してもらえないことにこそ自分の天才性があるかもしれないと気づくことが重要だと考えます。

天才を殺す凡人 北野唯我 日本経済新聞出版社
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